お書き初め
ちゃん♪ちゃららららららん♪(新春名曲アルバム・春の海) ここは石川県の某所。海に近い某有名観光旅館の一室。厳寒の元日、夜も更けてから慌ててチェックインした一組の夫夫(いや、野郎同士なんだけど・笑)がおりました。さてこの夫夫の旦那の方、元日は休みを貰える予定だったのですがそこは哀しい「刑事」と言う職業、やっぱり予定は未定のパターンでありました。それでも何とか昼過ぎに金沢郊外の仮の宿に帰宅し、ふてくされるヨメを何とか説得致しまして、旦那の上司の心使いであるこの海に近い某超有名超豪華観光旅館(あら、さっきより形容詞が増えてる)にやって来たのでありました・・・。 お正月らしいBGMの流れるフロント。長身に凄みの効いた無愛想な強面の旦那と髪を珍しくオールバックにし、夜だというのにダークブラウンのサングラスで軽く変装し、黒のロングコートな出で立ちのヨメ。夜半だというのに、そんな怪しげな(?)2人連れを臆することなく暖かくフロントマンは出迎えてくれたので有ります。ああ、プロフェッショナル!(笑) 用意されていた部屋で夕食を食べ、お風呂に入って一心地付いた頃には結構な時間と成っており、戻ってきた部屋には二組の羽布団(新婚さん用か?笑)が伸べられて有りました。窓の外は冬の日本海。白い物がちらちらと舞い落ちて旅情ムードを誘います。そして布団が伸べられている部屋の中は暖かく、昔ながらの『行燈』風に意匠を凝らしたオレンジ色の照明が枕元に灯されてムード満点なのであります。出張中はヨメから 「人様からお借りしてるお宅でそんなこと出来ますか!」 ・・・と、色々お預けを喰らっておりました旦那の「やる気」を満々と煽るので有りました(笑) 「遙一・・・?」 勃ち掛けた・・・いえいえ、もとい、沸き上がる下心を押し隠しながら旦那がそれとなくヨメの肩を甘いムードで引き寄せ様と致します。ヨメの方も大人しく旦那の求めに応じて、熱い口付けを受けよう、とうっとりと瞳を閉じて見せます・・・・が?? 旦那の熱い唇を、瞬時に遮る冷たい紙の感触。 「????????????????????」 「・・・その前に大事なことが有るでしょう?」 どこにしまい込んでおりました物か、ヨメは手の平からトランプの束を取り出し、それでもって旦那からの口付けを遮り、不適に笑って居たのでありました。さっすが、元天才マジシャン高遠遙一、侮れません。 思い起こせば去年の新春。ヨメ高遠は、燐家の金田一から聞いた “姫はじめ=年の初めの日に百人一首って言うカードゲームで夫婦で勝敗を競って、負けたほうがその一年勝った方の言うことを聞くって言う古い日本のしきたり” ・・・を、本当の意味を調べもせずそのまま鵜呑みにし、毎年の恒例行事として頭の中にインプットしているらしい。あわれ猪旦那、いきり立った(だから・・・汗)気勢をそがれ、がくりと肩を落とします。が、突然思い立ったように、自分のバックから有る物をごそごそと取り出し、 「今年はこれにしないか?」 と、ヨメに色鮮やかな原色系のカードを差し出します。 「これは?花札ですか?」 「ああ。途中のコンビニで、遊ぼうと思って買ってきたんだが。遊び方知ってるか?」 「ええ・・・魔術団に居るときに、結構相手させられてましたから、遊び方は・・・。でも、いいんですか?僕、これも結構強いですよ?」 そう、意外なことにヨメ高遠、幻想魔術団のマネージャー時代戯れに花札のメンツに混ぜて貰って、初めの1〜2巡はぼろ負けしたものの、コツが判ってからはのほほん(もちろん演技)と大勝し続け、ついには誰も高遠を誘わなくなってしまった程の腕前で有りました。・・・もちろん、他の団員がヘボだったからって事は言うまでも無い事ですが、気の毒な猪旦那の為にも、お正月お題をこなさなくちゃいけない作者のためにもヨメ高遠には内緒にしておきましょう。 「勝負は、やってみなくちゃわからんからな」 ふふふ、と、不敵に笑う猪旦那。まあ、いいでしょうとお情けをかける様な顔のヨメ高遠。その勝敗や如何に・・・? 「そ・・・んな、馬鹿な!」 新春恒例「姫はじめ花札勝負」は恨みっこ無しの3回勝負。初回は難なくヨメ高遠が勝ちを取り、その油断に畳みかけるようにさくさくと猪旦那が2巡3巡の勝ちをもぎ取りました。その手並みの鮮やかな事。普段ヨメの尻に敷かれてる情けない旦那とは思えない程の勝ちっぷりで御座いました。今年の勝利の女神は猪旦那に微笑んだのであります。(あら、意外〜!笑) 「なにか、いかさましたんじゃないでしょうねっ!」 負けたことに納得のいかないヨメ高遠、旦那に向かってぷりぷりと怒ります。調子に乗った猪旦那、くねっ!と身をくねらして(!) 「えー。だって俺、“猪・鹿・蝶”の内の猪だもん。本当は強いんだから♪」 と、見事な棒読み無表情のまま科を作って応えます。途端、ヨメ高遠の四肢にゾゾゾっと悪寒は走り抜け、 「やめて下さいっ、可愛くないっ!!」 と、鳥肌立った上半身をさすりながら叫んでしまいます。 それでもヨメ高遠、覚悟を決めたのか、投げやりにではありますが 「なるべく一度で済む様な罰ゲームにして下さいね!」 と、不承不承言い放ちます。去年一年の猪旦那の罰ゲームが“体力低下する夏場は、高遠の同意がないとHはお預け”(因みに猪川家の愛の営み回数、普段は週3回くらいとお思い下さい。それでも多いか?・笑)だったことを考えると、ずいぶんと虫の良いヨメ高遠の言い分でございます。ヨメ高遠のずいぶんな物言いにもめげず、猪旦那にやっと笑って 「・・・今日は何日だ?」 と、素知らぬそぶりで高遠に尋ねます。 「・・・正月からナニ惚けてるんです?元日・・・じゃなくて、日付が変わっちゃったから2日ですけど」 「それじゃ・・・書き初めでもして貰おうか」 はい、ここに来てやっと作者に振られたお正月お題の「書き初め」に到達致しました。(拍手!ぱちぱち!)が、そもそも書き初めとは――― その年一年の書の上達を願って、正月二日に書道を行う事。二日の日を書初めの日とするようになったのは、古来宮中において「吉書始の式」がこの日行われ、若水で墨をすり、芽出たい名歌名文を書いたのが起源とされている。 (以上、ものの本による) ・・・だ、そうなのですが。この場合はちょっと違うので有りました。 「・・・・ここに、硯と筆が有るんですか?」 「・・・俺の目の前で“掻いて”もら・・・・」 ばきっ!!!!! ヨメ高遠の怒りの鉄拳が、猪旦那の顎に炸裂致します。 「ナニ馬鹿なこと言ってるんですか!っこの変態っ!スケベ大王っ!!絶対いやですからね(怒)」 「・・・俺は、去年夏場お許しが出なくてお預け喰らってても、文句言わなかったじゃないか。それを一度で済ますんだったら、そのくらいしてもらわんと帳尻が合わん!」 流れ出る鼻血をすすりながらの猪旦那の抗議。(本当に鼻の粘膜弱いったら)がん、として譲らぬ旦那の顔を呆れ混じりに見つめながら、ヨメ高遠、意を決して勢い良く浴衣の帯をしゅるりと解き、布団にへたりこみます。 「ああ、ああ、もう、判りました!やりゃあいいんでしょう?罰ゲームを!」 喜びと期待に、見えないしっぽをぱたぱたと振りつつ、ヨメのそばににじり寄る猪旦那。その猪旦那に、 「ただし!条件が有りますからね!手を触れないこと。我慢出来ますか?」 と、釘を刺すことを忘れないヨメ高遠で有りました。猪旦那、不承不承頷いて、ヨメ高遠の開いた足の正面、桟敷席にどっかり胡座を掻いて“書き初め”の開始を待ち受けます。 ヨメ高遠、ふーっと一つため息を付き、瞳を閉じてコンセントレーション。ショーに望む前のように、呼吸を整え、たっぷりと艶を含また瞳をゆっくりと明けます。はだけた浴衣の内側、白い肌を自分の手のひらで撫で上げ、夜気に晒さして参ります。時折、その手が胸の飾りをそっと掠め、官能に潤んだ瞳を猪旦那に向けて誘います。そして右手をはだけた浴衣の裾に滑り込ませ、自らの欲望をやんわりと握りしめました・・・・・。 「あ・・・、ん、ふぅ」 甲高い濡れた声を惜しげもなく漏らし、上気した上体を軽くそらし、自らの華芯をくちゅ、と一こすり。そして、猪旦那を誘う様に視線を投げかけます。鼻血でも垂らしながら自らの狂態に見入って居るであろう、と高をくくったヨメの目に飛び込んで来たのは―――何故か、つまらなさそうで悲しそうな猪旦那の困った顔。 「・・・何かお気に召しませんか?」 むむっと、ヨメ高遠がいささか憤慨しつつ旦那に問いかけます。 「・・・俺の見たいのと、違う」 「道具使えとでも言うんですか!?(怒)」 「・・・いや、そうじゃなく・・・」 「だから、何だって言うんですか、もう!お望み通りしてるじゃないですか!」 「・・・おまえは、俺を見ているようで見てない。俺はショーが見たいわけじゃないんだ。生身のおまえが普通にしてることを、おれの前で見せてくれ」 つまりは、“見せる側に徹底したショー仕立て”の自家発電は猪旦那のお気に召さない、と言うことらしい。あくまでも対等の立場で、生身のヨメ高遠が自分の手で喜ぶ姿を猪旦那は見たがったので有りました。素直な官能を、猪旦那の目の前に晒させる―――。意地っ張りで我が儘なヨメ高遠には、それは実はちょっと苦痛な事だったのです。 「・・・・ふん!」 「どうした?もう、終わりなのか?」 くす、と笑って、猪川が高遠の顔を近くでのぞき込みます。先ほど情けなく鼻血を啜って居たとは思えない程、イケズなたらしっぷりです。さすがはスケベ大王様でございます(笑) 「手、止まってるぜ?」 「・・・く・・」 間近に痛いほどの猪川の視線を感じて、いたたまれなく思わず高遠が視線を逸らしました。 「恥ずかしいか?」 「誰が、恥ずかしいなんて、事・・っ」 負けず嫌いの高遠、きっ!と猪川の瞳をにらみ返します。にらみ返した猪川の瞳が、先ほどの続きを無言で促し、高遠は仕方なく自らを慰め続けます。 「・・・ん」 「・・・ん?」 猪川は、先ほどの約束通り高遠に指一本触れてきませんでした。そのかわり、愛おしいヨメが自らを慰める姿を、痛い程真剣で、そして優しい瞳をして見つめ続けます。それは、いつものように触れられるよりも数倍、高遠には気恥ずかしく、そして不思議と官能をじりじりと追い立てて参ります。欲望に立ち上がった小さな乳首を、自らが握り混んでいる華芯を、猪川の視線がなぶって行くのを感じ、高遠は沸き上がる熱に体をふるわせました。 「あ、あ、っ・・・、ふ」 「遙一・・・」 「あっ、ん・・・」 「遙一」 「・・・いっ、や!だ・・・」 「どうした?」 「見な・・いで、ください」 高遠は、恥ずかしさのあまりついには伏せてしまった瞳を小さくふるふるとふるわせながら、猪川に嘆願します。 「可愛いな、お前・・・」 「・・・可愛くなんて、有りません」 「そういう、意地っ張りな所が」 「・・・ばかっ!!」 と、高遠が勢い良く上体を猪川の方に傾けた拍子に、布団に付いて体を支えていた左手からかくりとと力が抜け、高遠の細い体がふかふかの羽布団に沈みます。 「あ!」 その隙に、猪川は高遠の足の間に体を滑り込ませ、高遠の華芯に顔を寄せました。 「・・・・見ててやるから、最後までやって見せろよ」 「・・・くっ・・」 高遠は恥ずかしさと、情けなさと・・・それを上回る快楽に身もだえしながらも、猪川に言われるままこわばる指を動かしました。不意に、熱く濡れた感触をその指に感じて、高遠が慌てて上体を起こします。 「ちょっ・・・手を触れないって・・・」 「だから、“手”じゃないだろ?」 猪川の舌が、濡れた指の隙間を縫うように、高遠の弱いところを攻め始めます。 「あ、あっ!あ・・・い、や、」 「いやなのか?じゃあ、こっち、だな♪」 猪川は嬉しそうにそう言うと、淫嚢のかげりを掠め、最奥に咲く淫華に濡れた舌をはわし始めました。 「あ!や・・・ま、さすけ、さんっ!」 ぴちゃぴちゃと言う卑猥な音が、高遠の耳朶を苛みます。 ほころんで来た小さな隙間から、猪川の熱い舌が入り込み、届く範囲の高遠の中を、執拗に攻め続けます。そして、それに応えるように、小さな蕾が猪川の舌をきゅ、きゅと締め付けました。 「は・・・あ、ああ!やあっ・・・・!!!!!」 ほどなくして、高遠は自らの腹の上に欲望を解き放ちました。 「・・・・遙一?」 猪川は手早く腹の汚れをタオルで拭き取ってやり、荒く息を付く高遠の顔をのぞき込みます。二の腕で顔を隠していた高遠でしたが、猪川が自分の横に来るのを認めて、がばっと体制を入れ替えて、猪川の上に跨ります。 「・・・手を触れないんじゃ、なかったのか?」 「うるさいっ、ですねっ!僕が触る分にはいいんですっ!」 上気した顔で、うっすらと涙を浮かべながら猪川を見下ろす高遠は、溜まらなく淫らで。そうして愛おしくて。高遠が猪川の立ち上がった物に手を添えて、自らの蕾に導き、ゆっくりと腰を下ろしました。 「あ、あああ、あ・・・んっ」 「遙・・・いち・・っ!」 高遠は、荒く息を継ぎながら、汗ばんだ体を猪川に預けました。 「・・・僕、だけ、なんて、・・・ずるい」 少し拗ねて甘える高遠が、猪川は可愛くて、愛おしくて。 「もう、触ってもいいのか?」 「・・・とっくに触ってるじゃないです、か」 そう。猪川は高遠の心の奥底に、孤独な魂に・・・いつでもしっかりと触って、抱きしめて暖めて居たのです。意地っ張りの高遠は、決して口には出さないけれど・・・。 「?」 事、ヨメに関してはちょっと鈍感な猪川は、高遠の言葉に少し首を傾げ、苦笑して。それでもゆっくりと起きあがり、暖かな大きな手で高遠をしっかりと抱きしめたのでありました。 「遙一・・・っ」 強く強く抱きしめられた熱い手は、高遠の細い腰に添えられ、下から熱い楔で突き上げられて。 「あ、ああ、あああっ!まさ、すけ、さ・・」 互いが互いを欲し、素直な欲望をさらけ合い、濡れた瞳で見つめ合いながら・・・今年初めての愛の営みの、正しき「姫はじめ」の夜は更けて行ったのであります。 明けて2日の朝、泥のようにくたびれ果てて目覚めたヨメ高遠、夕べの戦果にいたくご満悦で朝食の雑煮の餅にかぶりつく猪旦那の疲れの色も無い“ぺっかぺか”の顔を見つつ来年の姫はじめに向けてリベンジを誓うのでした。 やっぱり、今年もヨメ高遠の姫はじめに関する誤解は解けて無く、来年も、その又次の年もあほらしくも楽しい「姫はじめ勝負」は猪川家にて続けられて行く事に成りそうでございます。 窓の外には、新春の光を受けて輝く日本海。その光がくすくすと笑っているような、そんな新春の一コマで有りました。 end♪ |
03/1/23 UP