惑う人

「何をそんなに戸惑ってるんです?大尉らしく無いですよ」
 人気の無くなったブリーフィングルームを後にしたクワトロ。追いついたカミーユはかねてよりくすぶり続けていた苛立ちまま問いかけた。
「・・・私らしいとは一体なんなのだろうな」
 出口の無い惑いに落ちた者に他者からの救いは、本当の意味ではもたらさられる事は無い。それは十分過ぎるほど解ってはいるクワトロだった。結局答えは惑う己の中に存在しているのだ。その答えを探し出し、掴み納得する事は、己自身にしか出来ないのだけれど。
「・・・大尉」
 ダークグラスをするりと取り去り、クワトロが何、と問いつめる前にカミーユはその薄い唇を貪る。
「ん、・・ふっ、カ、ミーユっ!」
 通路の壁に追いつめられ、吐息まで幼い雄に支配されそうになったところでクワトロはようやく解放された。
「そんな無防備な顔、僕の前でしちゃ駄目ですよ。僕はいつでもあなたが欲しいって狙ってるんですから」
 そう言ってカミーユはに、と不敵な笑みを見せた。クワトロはふ、と唇の端に笑みを乗せると
「そうそう君の好きにはならんよ」
 そう言った。
「・・・迷いは自分を殺すことになる、でしょ?大尉」
「分かっているさ・・・」





惑いの出口は、未だ見えない。だが、それでも前に進んで行くしかないのだから。



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