愛の孤島〜作業服高遠〜・1
*初めに* このお話はかんすが金田一にはまりたて当時(99年頃?)本当に見た「夢」(白昼夢じゃなくて睡眠中・笑)の内容を「1」としてリライトした物です。「2」はこの「1」から発祥したファンフィクションとなります。こんな夢見るのもどうかと思うんですが(爆笑)金田一にハマリ立て当時は脳味噌がフル回転でお話を掘り起こしていたようでこのほかにもサイトには上げておりませんが沢山の夢を見せていただいた幸せな時代だったなあと我ながら懐かしいですわ(笑)ちなみに未完結。パソコン無くて携帯のちっさいボタンで書きました(苦笑)携帯メールの送信ファイルに保存→某所様に貰っていただいていた物をリニューアル再掲。 |
古い古い平屋の事務所、狭くて床も傾いている。部屋の中央にはこれまた古くて重い、事務机が四つ。うち二つは書類やらカタログやらが堆く積み重ねられて、すっかり物置と化していた。 ともあれ、今日は年明け最初の仕事始め。事務所の、天井近くの角にしつらえられた小さな神棚に、柏手を打ちながら、高遠は隣に立つ所長兼作業班長兼事務長兼・・の、上司の顔を盗み見る。 ああ、なんて美しい人なんだろう。新春の朝の光りに照らされてなおいっそう美人さんがびじんに・・・ そう、仕事始めとは言え、会社の規定通りにだっさださの作業用ジャンパーを着込んで居たとしても、彼の思いびと、明智健悟は美しかった。 昨年四月、大卒で電気工事関係の会社に就職してすぐに、東京からとんでもなく離れた、文字通り「絶海の孤島」の、たった二人しかいない営業所に配属を言い渡された時は、本気で就職浪人になって、コンビニの店員になってやる!とかなりやさぐれていたのだが、しぶしぶと引き合わされた所長は、頗るつきの美形だったのである。(いや、男なのだかこの際それは置いといて・・・) 不覚にも、高遠遥一22歳は、その瞬間、いきなり恋いに落ちてしまったのであった。 やさぐれていた気持ちもどこへやら、高遠は下心満々で、喜嬉として絶海の孤島に旅立ったった。 島では、二人は社宅(と、聞こえは良いが、たんなる古っるくてだだっ広い民家なのだが)で寝起きする、と言うさらにおいしいシチュエーションが待っていた。 恋した人と、一つ屋根の下。これぞ、「落として下さい」的な状況、据え膳状態だぜ〓!・・・と、喜んだのもつかの間。現実はそうは甘くはなかったのである。 なにせ右も左も区別の付かない新人、覚えることは山ほどある上に、高遠の恋した美しく麗しい年上の明智所長はめちゃくちゃスパルタで人使いが荒かったのである。 主な電気の供給源を、小さな潮流発電所と風力発電に頼っているこの島では、いつも何かしらのトラブルが起こり、たった二人しか居ない営業所は現場作業が無い日はまずなかった。初めの半年は、社宅に帰っても昼間の疲れで、「ばたんきゅー」っと、眠ってしまい、とても明智にちょっかいをだそう、なーんて元気はなかったのである。 明智は、こんな苛酷な営業所で、もう5年も仕事を続けているのだという。有能な上に 、見かけによらずタフなんである。 仕事にちょっと慣れたころ、やっとモーションをかける事ができたのだが、かる〓く交されてしまって、てんで相手にされてない・・(涙)それでも、懲りずに土日に一緒に東京に帰りましょう、などとさそったりするのだか、どちらかが島内に残らなければならない状況なので、「君一人でお帰りなさい。」と振られ続けていたりする。 ガードも、固いのであった・・・(涙) 高遠のモーションとは別に、どうもこの人は、GWとかお盆とか、長い休みの時も島を出ようとしないのである。もっと端的に言うと、東京に帰ろうとしないのである。なにか余程いやな思い出が有るのだろうか? そんなの、私が忘れさせてあげるのに・・と、不遜にも密かに思ってしまっちゃってる高遠くんなのだった。 「高遠くん?」 急に名を呼ばれて、はっっと白昼夢から目覚めた。 「は・・はい?」 なんだか、ちょっとまぬけな返事をかえしてしまった。どうやら、明智さんに見惚れてぼーっとしているうちに、神棚への新年のごあいさつは終わってしまっていたようだ。明智さんがちょっと呆れたように自分を見て、クスッと笑った。 「お正月ボケですか?ま、早くお仕事モードに切り替えて、今年もしっかり頑張ってくださいね?」 綺麗な顔が目の前でほほえむ。まさか、明智の顔に見惚れてあらぬことを考えてましたとはいえず、高遠は照れ隠頭を掻きながら頑張ります、とのみ答えた。 大学生の頃は結構モテた方で、それなりに恋愛の駆け引きも、Hのテクニックも自信があるのに、どうしてこの人には強引に持っていけないんだろうなぁ・・・仕事の先輩としても尊敬してるし、この人の事、恋愛対象として本気だし・・・なのに、いつもこの笑顔に弱くて、つい、交わされてしまうんですよねぇ・・ 明智が今年最初の仕事に取り掛かるため、隣から離れたのを確認して、高遠は徐に神棚に向き直ってもう一度、小さく柏手を打った。 (困ったときの神頼みじゃないですけど、もう、こうなったらなんでもかまいません。ああ、神様今年こそ明智さんを落とせますように・・)ぱん、ぱん。 あのー、神様も、そんなおねがいはされたって困るんですが・・もしもし?(絶句) 明智所長が今年最初の仕事の説明をしようとしたとき、立て付けの悪い事務所の木の引き戸を誰かがたたいた。 「はい?どうぞ!」 明智の声に答えて、外の人物が引き戸を開け・・・て入ってこない。 がた!かたカタ!!ギシっ!みしみし・・と、派手に音を立てながら立て付けの悪い引き戸と格闘していたのである。ずいぶんガタのきている戸は、開けるのにかなりの熟練した技術を必要として、高遠も始めの頃は苦労させられたのだった。 「あ!スミマセン、無理に開けないでください。壊れちゃうので・・今開けますから!」 どうやらお客は完全に引き戸の御機嫌を損ねたらしい。見兼ねて明智が歪んだ引き戸のあちこちを叩きながら、なんとか開ける事が出来た。 「明智さん!!」 引き戸が開いて客を見た瞬間、明智は固まってしまった。 客はどう贔屓目に見ても高校生、とても電気工事を頼みに来たようになんかには見えない少年だった。 「ごめん、オレ、来ちゃった・・会いたくって会いたくって、我慢出来なくって・・・・」 そう言いながら、少年が明智所長の手を取って、じっと彼の惚けた顔を覗き込んだ。 なっ・・・なんだ!?あのガキは!事もあろうに、私の明智さんの手を握るなんて!その上、そんなに接近しないでくれ!! 内心、やきもきしている高遠は置いとかれっぱなしで、二人の世界は展開しちゃっていたりする。 「き・・金田一くん・・・?」 その声は、確かに高遠の麗しい思いびとの物だったが、今まで耳にしたことが無いように儚気だった。 「そうだよ・・・5年ぶりだから、わかんなかったらどうしようって思ってたけど、・・・顔、覚えててくれたんだね」 嬉しそうに少年は明智を抱き締めた。 あああっっ!!あのガキ、 なんてことを!!明智所長、放れなさい!ひっぺがしなさい!突き飛ばしなさいって〜!! 必死で願う高遠。しかし、当の明智はまだ固まったままであった。それどころか、抱き着いてきた少年に、懐かしさと喜びと、哀しみの入り交じった、戸惑いのまなざしを向けていた。 「はじめ・・・くん」 「あ・・あの、所長?」 少し遠慮がちに掛けた高遠の声に、明智がはっとして振り返る。 ち・・ちょっと〜、なんでそんな、今にも泣き出しそうな顔してンですか、明智さ〜ん(涙) 「あ!す・・すみません、高遠君。申し訳ないのですが、ちょっと、席を外しますので後お願いします」 茫然としている高遠の返事も聞かずに、明智と少年はさっさと出ていってしまった。後に残された高遠は一人もんもんと悩むのだった。 なんなんだなんなんだ、今の顔わ〜っっ!!あんな色っぽい顔、私には見せてくれたことなんかないのに!!いったい、今のガキはなんなんだ〜っ なんだか、すごく嫌な予感がする。ああああ・・もしかして、もしかしたら、あのガキと明智所長は・・そんな馬鹿な!でも、いや、やっぱり・・・・・・・ 高遠遥一は、ぶつぶつと呟きながら、狭い事務所の中を行ったり来り、歩き回った。 ああああ、もし、そうだとしたら、どーしよどーしよどーしよー!!!・・・ 「ああ、神様、どーしたらいーんですかー!!さっき、お願いしたぢゃないですか〜〜!!!!!」 神棚に、高遠の空しい叫びが木霊する。 ・・・だから、そんな願いは神様も困っちゃうんだってば・・・(汗) |